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第1話

夜の帳が広がる。 雲一つない晴れ渡った夜空 月が一番高い位置に昇ったとき...それが俺達の約束の時間。 別に決めた訳じゃない、けどいつしかそれが合図のようになっていた。 クゥーン... 岩の上に座って眼下に広がる森を見つめていれば、すり寄ってくる二匹の狼。 「どうした?夜、闇?」 フワフワの毛を揉み込むようにして撫でてやれば、更に甘えるように頭を擦り付けてくる。 素肌に触れる柔らかい毛と鼻先が擽ったい。 「よしよし...もう少し待って来なかったら帰ろうな。」 毎日会える訳じゃない。 だいたい、どこに棲み家があるのかも知らない。 会うのはいつもここで、ここにいる以外の時間何処で何をしているのかさえ知らない。 ...だいたい、年齢もわかんねぇしな。 確実に俺よりは年上で、オッサン。 吸血鬼なのだから何百年も生きてきたのかもしれない。 それは自分も同じで...純血であるが故に長い時を生きてきたし、生きていかないといけない。 だからこそ、、、あの男との出会いは運命のように感じたんだ。 同じ時を生きていける、パートナーになれるんじゃないかと。 「って、向こうがその気にならないとなぁ...」 目の前の夜と闇が首を傾げる。 いつも側に居てくれて一番の理解者である狼。 コイツらのお陰でこうして待つ時間も寂しくはない。 柔らかい毛並みを撫でながら夜空を見上げれば月が静かに輝いていて。 「...........」 ゆっくりと瞳を閉じ、耳を済ます。 虫の音 木々をざわめかせる風のそよぎ 生き物の息遣い それらに混ざってバサリ...と空気が揺れた。 「...やっと来た。」 ニヤリと笑って振り返れば、闇に溶け込むように佇む男の姿。 「待ち合わせていた訳じゃないだろう?」 余裕そうに微笑む男に手を差し出す。 ゆっくりと近づきその手を掴むと、力強く引っ張られた。 「なら何で来たんだよ。」 「...さあね、何でだろう。」 勢いのまま身体を寄せ首に腕を回した。 弛く腰に絡まる長い腕にホッと息を吐く。 強く抱き締め返してくれる訳じゃない。 けれど、引き剥がされる訳でもない。 この距離感がもどかしくも...心地よい。 「...ほら、吸えよ。」 「情緒ないな。」 挑発するように首筋を晒せば、クスクスと笑いながら返ってくる声。 そうして吸い付いてくるその小さな頭をゆっくりと撫でる。 「ん...」 ガリッと首筋に走る僅かな痛みに声をあげた。 夜と闇が大人しく見つめる。 本能で分かるのだろう...闇の中で生きる男の絶対的な強さが。 様々な種族が存在する世界で頂点に君臨する一族。 この男の中で、かけがえのない存在になれる日がいつか来れば良い... そんな想いを込めて、狼とは違うさらりとした黒髪に指を絡めたー。

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