3 / 3

3

「どうした?痛むのか?」  ああ、起こしてしまうとはとんだ失態。お目覚めにはまだ時間が早うございますよ。  引き寄せられるまま胸元に顔をうずめ、目を閉じる。 「役目とは言え、お前は夜通し眠らずに居るのか。  もういいから休みなさい。身体も痛むだろう? どうにも夜は理性が働かず、酷いこともしてしまうから」  閻魔さまが慈しむように抱き締めてくださる。暖かで力強い、他の誰も知らない姿。  シアワセだ。  どうせ消えてなくなるのなら、今がいい。 「……その望み、聞き入れよう」  暖かさに沈み込むように、全ての感覚、そして姿も消えて無くなった。 。 。 。 。 。  仕事柄、言葉にしなくとも望みは伝わる。  それが自分に都合の良いことであれば尚更。  地獄界もキャパオーバーで、全てを受け入れてなどいられないのだ。 「地獄に来たら私が命じない限り、ずっとそのままになってしまう。  秩序を守るためには温情など要らないのだよ」  朝が来たらまた、死人を裁く地獄の閻魔に戻らねばならぬ。仄かな熱の名残を供に、二度寝を決め込んだ。 <おしまい>

ともだちにシェアしよう!