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 死人は誰もが閻魔大王の前に立ち、その沙汰を委ねる。地獄の責め苦を命じられるものもあれば、転生するものも、そのまま消滅するものも。 「地獄に来たら私が命じない限り、ずっとそのままになってしまう。  秩序を守るためには温情など要らないのだよ」  そして僅かではあるが、地獄で鬼として働くものも閻魔の一存で決まるのだ。  名も無き宿直(とのい)役の小鬼なれど、寝所に伴できるのは私ひとり。大事な(とぎ)の役を命じられた。疲れて戻った男は、此処で精気を養い、また朝が来れば皆の知っている閻魔大王の顔に戻る。 「このところは特に忙しい。1秒に2〜3人を裁いている計算か。瞬く間に人生の全てを評価されるのだから、裁かれる側はたまったもんじゃないだろう」  その0.5秒で、私は貴方のそばに居たいと思った。貴方もあの一瞬で見初めてくださったのでしょうか。それならとても嬉しいです。私は地上で生きている間に何をしたのか、今では既に記憶がありません。ですが、裁きを受ける瞬間に、貴方の近くに行きたいと強く願ったことは覚えています。 「俺はどうにもお前の瞳に弱いらしい。お前が望むことならば、すぐに叶えてやりたくなる」  言葉にしなくても、分かってしまうのですね。  私の望みを、貴方は汲んでくださった。

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