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第87話

 ちょうどいい熱さのタオルで体を拭われる感覚に、友悟の意識がゆっくりと現実に戻り始める。  気が付くと、ベッドで秋斗に後ろから抱きかかえられるようにして、体を拭かれていた。 「あ、気が付いた? 友悟」  秋斗が心配そうな瞳で顔をのぞき込んでくる。 「……うん」  出てきた声はカスカスに掠れていた。  それが、快楽の声を出しまくったせいだと思い至り、友悟は赤面してしまう。 「……ごめんな、友悟」  なぜか秋斗が謝った。 「え?」 「病人を襲うつもりはなかったのに、『好きな人とベッド』という組み合わせは最強で、我慢できなかった……」  心底すまなそうに言う彼がなんだかかわいく思えて、友悟は照れながらも微笑んだ。 「べ、別に、襲われてなんか、いないよ。……僕も、その、し、したかったし」 「友悟……」  秋斗が後ろから強く抱きしめてくる。 「好きだよ……友悟」 「うん……」  しっとりと口づけを交わす。  そしてやさしい沈黙が降りてきて、(ああ……僕と秋斗は心も体も恋人同士になったんだ……)と、友悟が甘ーい幸福感に浸っていると、秋斗がとんでもないことを聞いてきた。 「なあ、友悟、気持ちよかった?」 「なっ、ななななな? そ、そ、そういうこと、聞く!?」 「大切なことじゃないか。オレはもうすごく気持ちよかったから、友悟もそうじゃなきゃ、オレ、恋人として失格だと思うしさ」  恥ずかしさに友悟がうつむいてしまっても、秋斗は重ねて聞いてくる。  どうやら答えない限り、許してくれなさそうだ。 「な、なんていうかさ……」  恥ずかしさをこらえて友悟は口を開く。 「うん……」  超緊張している面持ちの秋斗。 「う、宇宙遊泳って、あんな感じなのかなって……思った……」 「は?」 「だ、だ、だからっ、き、気持ち……よかったって、ことだよっ……」  最後には少しキレ気味に叫んでしまったけれど、 「かわいい友悟……」  彼は甘く囁いて、やさしいキスをくれた。         🐇  秋斗はその夜、僕が眠るまで『友悟の魅力』を語り続けてくれたのだった……。  あー、恥ずかしい。

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