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甚だしい思い違い。

 それから彼と顔を合わせなくなって二日が過ぎ、三日になり、さらに三日が過ぎて一週間になった頃――それでも事態は一向に変わらない。彼からの返事は依然として同じだった。  そこでセシルはカールトン卿が機嫌を損ねたのは一週間前にした口づけのせいではなく、セシル自身に嫌気が刺したのではないかということに気が付いた。  もしかしたら、セシルの邪な感情を察したのかもしれない。  両親を引き合いに出して側にいようとする醜い感情。セシルの恋心を――。  それもそうだ。自分から口づけなんてしたら、慕情なんてすぐに気付く。  同性に恋心を抱いた醜い自分――。  両親の約束を利用した汚い自分――。  いや、それだけではない。カールトン卿に自らの唇を押しつけたあの時、セシルは望んでしまったのだ。彼の心すらも欲しいと――……。  彼の側にいられるただそれだけで十分だなんて嘘だ。本当は、彼とこのまま、ずっとこうして隣にいたいと願っていた。  そんな願いが叶うはずもないのに……。  ああ、自分はなんて愚かだったのだろう。  イブリンに勇気付けられてその気になるなんて。カールトン卿の優しさも、もしかしたら自分と同じ気持ちなのかもしれないとすっかりその気になっていた。彼はただ同情で優しく接していただけなのに……。  赤い髪と目をした容姿も、自分勝手な心も――彼ならばすべて受け入れてくれると思い込んでいた。

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