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どうして?

 セシルのただならぬ雰囲気に何かを感じ取ったサーシャはもう一度笑みを作ると、屋敷の中へ通した。 「まあ、さあさあ、ちょうどクッキーを焼いたところなの。一緒にどうぞ。貴方は――まだ食べられるわよね」  暖炉の炎がぱちぱちとゆるやかな乾いた音を立てている。  セシルを一階にある小広間に通した彼女は、セシルを六人掛けのテーブルの向かい側に座らせた後にそう言った。 『まだ食べられる』と、彼女は尋ねた。やはり彼女もセシルがヴァンパイアになりかけていることを知っているようだ。 「生憎、主人とガストンは少し出かけているのだけれど、わたしで良かったらお話を聞きましょう」  クッキーの甘い香りがセシルの鼻孔をくすぐる。 「どうぞ、ごゆっくりなさってくださいませ」  メイドはティーカップに紅茶を注ぎ、一礼すると部屋から出て行った。  目の前では紅色の紅茶が注がれたティーカップから、あたたかな香りが広がる。  セシルは、彼女とふたりきりになったのを確かめてから口を開いた。 「サーシャは先ほど、僕にクッキーはまだ食べられるかとお尋ねになりましたね、カールトン卿がヴァンパイアだということをご存知なんですね。どうか教えて下さい! どうして彼がヴァンパイアになってしまったのかを……」  サーシャはセシルの突然の質問に驚きを隠せず、口を噤んだ。それだけでもよほど答えにくい質問らしいことが窺える。 「お願いです、サーシャ!!」  しかし、どうしても真実が知りたいセシルは身を乗り出し、彼女に尋ねた。その姿は真剣そのものだ。差し迫っている様子に彼女は観念したのか、しばらく沈黙が続いた後、重たい口を開けた。

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