「なにをっ！？」 　そこでセシルは我に返った。 　たしかに、自分は一緒に達したいと願ったし抱いてほしいと口にした。しかしそれはセシルの願望だ。こんなに醜い自分を抱いても、彼にとっていいことなんて何ひとつない……。 「もういい、ヴィンセント。もう、やめて！」 　いくら好いている人とはいえ、ただ同情で抱かれるのはあまりにも残酷だ。 　いや、自分のことなんてどうでもいい。 　それ以上に可哀相なのはカールトン卿だ。想ってもいないこんな穢らわしい子を抱くなんて――。 　カールトン卿には自分よりももっとずっと相応しい人が現れる。ようやく呪いから解放された彼の人生はこれからだ。自分なんかに身を捧げ、人生を棒に振ってはいけない。 　……ああ、胸が痛い。引き裂かれそうだ。けれども自分のわがままで大切な男性の人生を縛ってはいけない。 「もういい、やめて。やめて……お願い……」 　セシルは首を振る。すすり泣き、カールトン卿に乞うた。 「セシル、ぼくは、ぼくの気持ちを理解して貰うと言った。だから止めるつもりはない。愛しているよ。誰にも君を渡したくない」 　果たしてそれは本心からだろうか。本当に自分を欲してくれているのだろうか。セシルがおずおずと顔を上げれば、カールトン卿の苦しそうな顔がそこにあった。 　セシルの蜜をたっぷりと宿した彼の指の一本が、後孔に挿し込まれる。 「っひ、あっ！」 「痛いか？」 「……っう」 　このまま抱かれてはいけない。責任感が強い彼はセシルの面倒をみるという自らが課した使命を全うするに違いない。これでは彼の人生が台無しになる。彼の側から離れなくてはだめだ。そう思うのに、このまま抱いてほしいと願う邪な自分もいる。 　しかし、どんなに抗おうともセシルだって限界に達していた。彼へ寄せる慕情はあまりにも深いものになっている。だからセシルは強欲になった。 「ヴィン、セント……」 　彼の首に両手を絡め、すべてを委ねる。