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まるで悪魔のような……。

「本当に貴方ってのろまよね。いったい誰に似たのかしら」  ビオラの真っ赤な唇が偏屈そうに曲がる。 「髪や目も真っ赤だし、本当に気持ち悪いったらないわ」  ビオラは蹲るセシルに軽蔑の眼差しを向け、そう吐き捨てた。  ――そう、セシルの容姿は一般的なものではなかった。まるで人の生き血を吸ったかのような赤い目と赤い髪は悪魔のようにおぞましい。生まれつき身体が弱いおかげもあってか、色白な肌をしているから余計に髪や目の赤が目立った。  いったいいつの頃からだろう。幼い頃はそうではなかったのに、気付けば髪と目はこのような恐ろしい色をしていた。  実は自分は悪魔の子で、両親の命を奪った張本人は自分かもしれない。セシルは常々そう思うようになっていた。  それでもセシルは過酷な運命を受け入れ、懸命に生きる。偏に、あの人と出会うために――。  それは両親がこの世を去ってからの事だった。身体の弱いセシルが昔から処方されていたその薬と一緒に一通の手紙が添えられ、毎日欠かさず自分名義で届けられるようになった。  送り主は、『ヴィンセント』と記されている。  彼はなんでも母クリスティーヌが生前、身体の弱いセシルの為に駆け回り、探してきたお医者様らしい。両親が生きていた頃は彼らから手渡されていた薬は、今はこうして手紙を添えられ、渡されている。  封筒には住所などのその他の情報は一切記されていない。だからセシルには、『ヴィンセント』というそれが姓なのかそれとも名前なのかさえも判らない。

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