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尊い身分の働き手。

 それからだ。彼女たちはセシルのことをいっそう召使いとして扱うようになった。  さらに事態が悪化したのが、亡き父親の代わりを務める者がいなくなったことと、その年に十六の誕生日を迎えた義理の姉、ロゼッタの社交界デビューが重なったことだ。  社交界デビューを控えた彼女には新しい煌びやかなドレスが必要だ。  しかし彼女たちは節約というものを知らず、食事も、自分たちを着飾ることも忘れなかった。  おかげで生前父親がたっぷり蓄えていた財産は屋敷から出て行くばかりだ。雇用費さえも支払えなくなったことでメイドたちは一人、二人と去り、ついには継母のビオラとその連れ子のロゼッタ。そしてセシルのみが屋敷に取り残された。  こうしてハーキュリーズ家は伯爵という地位を持ちながら、今では名ばかりのものになったのだ。  ――とはいえ、彼女たちなりに、この緊迫した家計をどうにかしようとは考えているらしい。しかし当然のことながら、節約という言葉は彼女たちの中では有りもしない。  ビオラとロゼッタは内面を磨き上げることをすっかり忘れ、外見を着飾るのに大忙しだ。すべては自分たちに相応しい最も裕福で立派な紳士を探すために……。  ビオラは、セシルの部屋だったその場所を自分たちの衣装部屋へと変えてしまい、嘗ては馬小屋だったそこをセシルに与えた。  そしてセシルは今日も去っていったメイドたちに成り代わり、たった一人で仕事をこなすのだ。

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