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孤独。
その彼女たちがたった一食分の食事を抜いただけで飢え死にするとは到底考えられない。
実の娘が可愛い彼女はいつだってとても大袈裟だ。
それに対して、セシルはいつも不当に扱われていた。その理由は明白だ。セシルは彼女たちとは何の血の繋がりもないからだ。
セシルの実の母クリスティーヌ・ハーキュリーズは穏やかで愛情に溢れ、誰からも好かれるとても美しい女性だった。
しかしセシルが十歳の時に肺を患い、帰らぬ人となってしまった。
それからというもの、父は母が亡くなった寂しさを埋めるため、公務に勤しむようになり、おかげで五等爵位のうち、子爵という第四位の地位から三位の伯爵へと進出を果たした。
やがてハーキュリーズ家がずっと裕福になった今から五年前のことだ。セシルは亡くなった母、クリスティーヌの代わりに新しい母親を与えられた。
それがビオラだ。
彼女はクリスティーヌに負けず劣らすの美人ではあったが、強気で自分を着飾ることが大好きだった。そして彼女には自分の腹を痛めて産んだ愛娘のロゼッタがいた。
彼女たちは前妻の面影を持つセシルが気に入らないのだろう。父が公務で屋敷を留主にしている時の殆どを、まるでセシルが自分たちの召使いであるかのように命令し、こき使う。
それでもセシルは弱音のひとつも吐かず、継母や義姉のいじめからも耐え、ひたすら父親の帰りを待った。
それなのに……。
日頃の過労が祟ったのだろう。亡くなった母を追うようにして父親も他界した。
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