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かけがえのない大切な……。
(あとで読もう)
ヴィンセントからの手紙はよくある差し障りのない文句が綴られているばかりだ。それでもセシルにとって、この手紙は特別なものだった。
セシルは手紙と薬を抱きしめ、ふうっと大きく息を吐いた。その口元には笑みが浮かんでいる。
(さあ、とっとと仕事を終わらせてしまおう)
先程とは打って変わってまるで背中に羽が生えたように身体が軽い。自分でも単純だと思うが、この手紙と薬さえあればどんな辛いことだって乗り越えられるような気がした。
(えっと、次は庭の手入れだったっけ……)
ヴィンセントからの手紙をポケットに突っ込むと、セシルはビオラから言い渡された次の仕事へと移るのだった。
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