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ロゼッタの焚き火。

「貴方の部屋。紙切れがたくさんあって大変でしょう? 貴方にはいつも任せきりだし申し訳ないから、たまにはわたしも掃除してさしあげようと思って綺麗にしてみたの。どう? 気に入ってくれた?」  ロゼッタは唇を歪めて笑った。 「……っつ!」  ああ、なんということだろう。彼女の笑みを見た瞬間、セシルの背筋に寒気が走った。  彼女は悪知恵が働く時には特に目ざとくなるということをセシルはすっかり忘れていたのだ。 「まあ、そこにもあったのね。貸しなさい!」  あろうことか、ロゼッタはセシルのポケットにも目を付けたではないか。彼女はたった今届いたばかりのヴィンセントからの手紙を引っ掴むと、そのまま燃え盛る炎の中へと放り投げた。小さな飲み薬が入った小瓶が乾いた音を立てて地面に虚しく転げ落ちる。 「やっ! やめてっ!!」  命令されるのは慣れているし、二人からのいじめはいつものことだ。今さらだと諦めている。でも、これはあんまりだ。  ロゼッタの手を離れた手紙は無惨にも目の前で赤々と燃え盛る炎に飲み込まれる。黒い煙がうねり、空へと昇っていく……。 「そんな……」  セシルは膝を折り、地面に(くずお)れた。  そして残るのは、煤となった手紙の破片――ただそれだけだ。  手紙さえあれば、どんなに苦しくても、どんなに悲しくても、今日という日を乗り越えられる。生きていけるとそう思っていた。  けれども煤と化したヴィンセントからの手紙は今日一日分どころではない。これまでセシルが大切に取っておいたすべてだ。

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