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幸せになる資格。

 身体が重い。地球上の重力がまるでセシル一人にのし掛かってくるようだ。 「何をしているんだい、このうすのろ! 日が暮れちまうよ。さっさと仕事なさいな」  ビオラは、パチパチと音を立て、燃えている炎の前で項垂れるセシルを目にするや否や直ぐさま怒鳴った。  酷い。これはあまりにも残酷だ。二人からどんなに酷い仕打ちを受けても、今までずっと弱音を吐かず、涙を呑んで頑張ってきた。けれども、もう限界だった。  赤い目からは、ひとつふたつと大きな涙の粒が零れ落ちる。セシルはとうとう泣き崩れた。  ビオラとロゼッタはけたけたと楽しそうに笑っている。絶望するセシルを嘲笑う二人の声はまるで地獄の番人のようだ。 「セシル、それの後片付けもするんだよ? ロゼッタ、今夜のパーティーは公爵様もいらっしゃるそうよ」 「ほんとう? お母様!」 「そういうことだから、セシル。貴方にもきちんと社交パーティーに出て貰うからね。お前はロゼッタの大切な引き立て役。それまでにやるべき仕事をきちんと終わらせておきなさい」  泣いているセシルに慰めの言葉のひとつもない。継母はロゼッタと軽い足取りで屋敷に戻った。 「――――」  枯葉を運ぶ木枯らしが容赦なくセシルを巻き込み、去っていく。  自分には幸福という言葉とは無縁なのかもしれない。  セシルはただただ咽び泣き、絶望を味わった。  けれどもセシルには泣く時間すら与えられていない。どんなに辛く、悲しくともこの広すぎる屋敷の掃除を一人でこなさなければならないのだ。

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