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冷たく凍える。

 重い腰を上げ、屋内に戻ったセシルは踊り場の床と向き合った。冷たい水が(あかぎれ)を起こしている深い傷の間に侵入すると、また新たな血が雑巾掛けの布を真っ赤に染めていく。  けれどもセシルの手に痛みは感じない。あるのは悲しみに染まった胸の痛み。ただそれだけだ。  大切にしていたヴィンセントからの手紙を失い、絶望に暮れるセシルの唇からは嗚咽が止まらない。  冷たい廊下はセシルの華奢な身体を容易く飲み込んでいた。

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