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深く同情します。
Ⅳ
「ロゼッタ、きちんとなさいっ!!」
セシルが懸命に地面の汚れを拭き取っていると、衣装部屋からビオラの金切り声が聞こえてきた。セシルは何事かと思い、雑巾掛けの手を止めて、二人がいる衣装部屋をそっと覗いた。
なんでも今夜開かれる舞踏会には、今、世間を騒がせているカールトン公爵がお見えになるらしい。ビオラはその公爵を娘のロゼッタに射止めさせようと必死だった。その彼女は愛娘ロゼッタのコルセットと格闘中だ。
「まあ大変。ロゼッタ、貴女太ったわね。さあ、今日から食事制限をいたしましょう」
「そんな、酷いわお母様!! ぐえっ、ぐるじぃ」
「我慢なさい。公爵様と婚約まで辿り着けば好きなだけ何でも食べられるし贅沢し放題なんだから! こんなぼろ屋敷とはおさらばよ」
ビオラは愛娘を宥めるが、彼女はそれどころではないようだ。襲い来る圧迫感に口元を抑え、顔を真っ赤にして耐えていた。
「お母様、吐きそう……」
「あ~、ダメダメ。いいこと? 貴女はわたくしに似てとても綺麗なのよ? カールトン公が貴方を見初めないはずはないわ。問題は、この出かかっているお腹だけよ!」
「ぐえっ、ぐるじい……」
ビオラはコルセットのリボンを強く引っ張り上げる。
二人の光景を見ていたセシルは、ロゼッタに深く同情した。彼女には大切にしていたヴィンセントの手紙を燃やされた。けれどもなぜか、今は自分よりもロゼッタの方が憐れに見える。
セシルは手の甲で乱暴に目を擦り、溜まった涙を引っ込めると、踊り場を磨き上げていった。
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