18 / 241

会場。

 斯くして、ロゼッタにパーティードレスを着せることに成功したビオラは、それからの仕事が早かった。彼女はセシルに白を基調とした絹のジュストコールとジレ。それからキュロットを与え、夕刻になると馬車を手配して乗り込み、屋敷から数キロ離れたパーティー会場へと急いだ。  曲がりくねった道をずっと北へ、東へと進めば、やがて大きな屋敷が見えてくる。今日はトステフィール伯爵の愛娘、イライザが十六の誕生日を迎えた。記念すべき社交界デビューを祝うパーティーだ。そこには様々な華族たちが招かれた。  華族たちの馬車が長蛇の列を成し、トステフィール家へと繋がる巨大な鉄の門をくぐり抜ける。  そして今夜もまた、セシルにとって地獄のような長い夜がはじまるのだ。  ――むせ返るような人の熱気。  ――主張する香水の匂い。  ――そして自分を非難する視線と陰口。  会場での仕打ちを考えただけでもセシルの身体は物理的な寒さとはまた違う寒さが蝕む。喉には大きなビー玉が入っているような気がしてくるし、緊張で吐きそうだ。  セシルはビオラから与えられた白い手袋を嵌めたその手を強く握りしめ、今にも泣き叫びそうになるのを堪える。  ややあって、三人が乗る馬車もトステフィール伯の屋敷の門前に到着した。 三人は馬車から降り、玄関ホールを行く。  トステフィール伯の屋敷はとても豪華だった。天井には巨大なシャンデリアが並び、嵌め込まれている大小様々のダイヤモンドたちが照明に乱反射して煌びやかに輝いている。シャンデリアに導かれるようにして大理石の廊下を進めば、その先は大広間だ。

ともだちにシェアしよう!