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第91話
「あまりにも…早急過ぎる」
「こんなこと過去にはなかったはずなのだが」
古い文献を隈無く読み漁っても桜緋のような力の持ち主がまだ力を制御出来ないうちには天界に上ったという記述はない。
そうなるのは力を持つものが己でそれを余すことなく使えるようになったとき
だから今回はあまりにもおかしいのだ。
だとすればどう言うことなのか?検討もつかない。
そうして数日カナメの妖力はほぼ戻り翠玉さんもやっと目を覚ました
蒼と紅、それから桜緋がいないことを問われ今回のことを話すと翠玉さんが俯いた
「シン様」
「翠。昔のように呼んではくれないだろうか?お前からそう呼ばれるのは何とも気持ち悪い」
「全く…相変わらずわがままですね。シン」
「うるさい…」
少し笑ってその後フッと真剣な顔になる
「シン…もしかすると…蒼と紅が欲しかったのかもしれない」
「え?」
「親父。どういうことだ」
「天界に自由に出入りできるものがいる。知ってるだろ?」
「あぁ…南のものでも選ばれた者」
「そう…男娼や娼婦…彼らに一度見てきてもらえるよう伝えてくれ…もしかするとその役を二人がさせられているかもしれない…あの子達は鬼の中でも異質だから…あそこの人たちは異質のものを好むから…」
「翠玉さんも…」
「しばらくあちらの世界へ行き来していたよ。毎夜毎夜多くの神のお相手をした。サコンもね…」
南の上のものたちは歴代皆美しい。サコンさんの前の主もそれから外れない
南の者はそうして神の恩恵を受け力を蓄える。そしてあの場を治めている
カナメに陣を組んでもらい南へ向かう
待っていたかのようにサコンさんとハクさんが出迎えてくれた
「いらっしゃい。ミヤビちゃん」
「こんにちは」
「カナメと翠玉は目を覚ました?」
「はい。」
「良かった。今日はあの子達のことでしょ?」
「はい」
「ハク。俺の部屋に通して」
「はい」
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