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第2話

 恐る恐る路地に足を踏み入れると、ぱたりと後ろで木戸が閉じた。  「あ……」  振り返るとそこにあったはずの木戸はなく、ただ路地道があるだけ。  戻ることも出来ない。提灯に照らされた道のさらに奥へと(いざな)われる。  紅く照らされていた通りを、ひと足進める毎に「ずん」と闇が落ちてくる。  一歩 「ずん」  二歩 「ずん、ずん」  足が止まる、戻りたいと思ってもなぜか振り返ることさえ出来ない、上から押さえつけられたように体が重たくなる。  「ああ、このまま闇に飲み込まれてしまう」そう思った瞬間に白い腕が闇の中から伸びてきて、むんずと肘を掴んだ。  「なか……や?」  その声の主のいるであろう辺りから、ほろほろと黒い澱が崩れて落ちて、通りが明るさを取り戻す。  「え、だれ?」  「やっぱり中谷か、こんなところで何しているんだ?」  透き通るように白い肌の男の子が立っていた。瞳は通りの闇と灯りを映して瑠璃色と茜色に交互に光っていた。

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