2 / 18
第2話
恐る恐る路地に足を踏み入れると、ぱたりと後ろで木戸が閉じた。
「あ……」
振り返るとそこにあったはずの木戸はなく、ただ路地道があるだけ。
戻ることも出来ない。提灯に照らされた道のさらに奥へと誘 われる。
紅く照らされていた通りを、ひと足進める毎に「ずん」と闇が落ちてくる。
一歩 「ずん」
二歩 「ずん、ずん」
足が止まる、戻りたいと思ってもなぜか振り返ることさえ出来ない、上から押さえつけられたように体が重たくなる。
「ああ、このまま闇に飲み込まれてしまう」そう思った瞬間に白い腕が闇の中から伸びてきて、むんずと肘を掴んだ。
「なか……や?」
その声の主のいるであろう辺りから、ほろほろと黒い澱が崩れて落ちて、通りが明るさを取り戻す。
「え、だれ?」
「やっぱり中谷か、こんなところで何しているんだ?」
透き通るように白い肌の男の子が立っていた。瞳は通りの闇と灯りを映して瑠璃色と茜色に交互に光っていた。
ともだちにシェアしよう!