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第 一 話

シュッと微かな音がして、小さな蝋燭の灯りが部屋の中をぼんやりと浮かび上がらせた。 ぐったりとベッドの上に横たわったまま、一人の男の背中を見詰めていた。 「・・・っ」 指先にも、腕にも上手く力が加えられず、そこから起き上がる事が出来なかった。 (このまま眠ってしまえたらいいのに) 襲ってくる睡魔に身を委ねるように目を閉じる。 「おい」 けれど、それは許されないことだった。 「いつまでそうしているつもりだ?用は済んだ、さっさと部屋から出て行け」 再び目を開けた。 視界に映る男は、冷やかな視線をコチラに向け、その手は扉のノブに掛かっている。 「・・・すみません、すぐに」 ゆっくりと上体を起こすと、首から下げた鎖の先にある二つの指輪がカチッと音を立てた。 (やばっ・・・・・・力入んない) ここへ来る時に羽織ってきた上着を床から拾い、頭から被ると、ベッドの四方に建つ柱に掴まりながら立ち上がった。 今にも崩れ落ちそうになる足を引き摺って、男が開けた扉を潜って外に出ると、パタンと背後で扉が閉まり、同時にガチャリと鍵が掛けられる音が聞こえた。 (そんなすぐに鍵閉めなくても) 外はまだ真夜中ということもあり、闇が支配している。 照明は最小限にまで落とされ、ぼんやりと足元だけが照らされた廊下を進み、建物から外へ出た。 ひんやりとした風に頬を撫でられて、ぶるっと身震いした。 ここから少し離れた場所に建っている宿舎へ足を向ける。 何度か膝から力が抜け、座り込み、込み上げてきたモノを吐き出し、袖で口元を拭う。呼吸が落ち着いたところで再び立ち上がり、歩き出す。何度かソレを繰り返した。 漸く自分の部屋に辿り着くと、そのままベッドに倒れ込んだ。 (・・・・・・シャワー浴びたいけど・・・無理・・・) しっかり扉が閉まりきっていない事に気付いてはいたが、これ以上身体を動かす事が出来ず、そのまま眠りに落ちた。 それから、きっちり三時間後、陽が昇り始めて目を覚ました。 帰ってきた時よりは幾分楽になっている体をゆっくりと起こして、ベッドの端に座る。反対側に設置されているベッドはシーツの乱れもなく、使用された形跡はない。 各部屋にある風呂場に足を踏み入れ、盛大な溜息をついて、蛇口を捻る。勢いよく降り注ぐ冷水を浴びながら、今度は小さな溜息をついた。 「アキラ!」 バタンッと、何の前触れもなく風呂場の扉が開かれ、ビクッと肩が跳ね上がった。 「へ?」 ズカズカと、服のまま入って来た男は彼を外へと連れ出した。 「お前っ・・・っつうか水浴びてたのかよ!随分冷えてるじゃねぇか!」 手元にあったバスタオルを頭から被せて、ガシガシと乱暴に水分を取る。 「ちょっ!」 「あ、そうだった!」 そのままバスタオルに包まれて、その上から両腕を強く掴まれた。 「お前、昨夜はドコにいた?」 「え?昨夜って?」 それは言えない場所ですが、とも言えない。 「お前と同室のタウが殺されたんだ!」

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