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終   話

街中を、従者を担いであるく皇子・・・ 物陰に隠れて二人の様子を監視していた彼は、ギョッと目を見開いた。 (うわぁ・・・) 警備部の成瀬。彼は、アキラと同室のタウが殺された事件を担当していた。 背後から心臓をブスリと一突き。元傭兵の男の背後を簡単に取れたり、ましてや攻撃を仕掛けることが出来る人物は限られており、既に犯人と思われる男は確保されている。今はまだ言い逃れを続けているが、奴は間違いなく黒、犯人に間違いない。 前日の夜勤を終えて寮に帰ってきた時、成瀬自身、アキラの部屋の扉は少し開いていて、なんとなく覗いたベッドの上に彼は寝ていた。自分以外にもアキラが部屋で爆睡している姿は目撃されている。 (・・・・・・気になるのはアキラと、あの方達との関係) 真っ赤になったアキラは大人しくアーシャに担がれている。 (アキラと朝までずっと一緒だったって言う第六皇子) 彼らとの距離を保ちながら後をついて行く。 (第五皇子とだって・・・・・このラブラブ度) 「ナル?」 「え?」 自分の思考に夢中になっていた成瀬は、アーシャ達のすぐ後ろに立っていた。 「あ」 アーシャに担がれたままのアキラと目が合う。 「や、やぁ、アキラ・・・と、アーシャ様」 ニッコリ笑ったつもりだが、実際引き攣った笑いを二人に向けていた。 「お前は警備部の人間だな・・・まだコイツに用か?」 アキラの容疑は晴れたと、アーシャには伝わっていた。 「いえ、そんなんじゃ・・・あの・・・その」 アーシャはゆっくりアキラを肩から下ろした。 「アキラ」 そのままアキラの腰を抱き寄せ、その瞳を覗き込む。 「俺に嘘は言わないだろうな?」 「はい」 今の自分の状況にパニックを起こしかけていたが、なんとか寸前で押し留めていたアキラは即座に頷く。 「お前は、朝までずっと一緒にユサといたのか?」 アーシャは『ずっと』を強調した。 「いえ、真夜中にユサ様の部屋を出ました・・・・・・俺は、ユサ様と朝まで一緒にはいません・・・でした」 徐々にアーシャの腕に力が入っていた。後ろめたくて視線を逸らす。 「お前とユサの関係に口を出す気はない」 ふっとアーシャの腕の力が緩み、身体を押し離される。 「申し訳ありません」 (ユサとのことは否定しないのか?) 顔を伏せてしまったアキラに向かって舌打ちをすると、アーシャは二人を残して歩き出した。 遠ざかる主の背中を見詰め、アキラは溜息を吐き出した。 「アキラ、たぶんアーシャ様は心配なさってるんだと思うぜ?ユサ様がお相手と長続きしないってのは有名だし」 「俺とユサ様はそんな関係じゃ・・・・・ないよ」 欲望は押さえ込めば押さえ込むほど大きく膨らむ。その欲望をどうコントロールするか、いきなり箍が外れて暴走されても困る。 「傭兵仲間の間でもよくある事で・・・・・・いきなり『抱かせろ』って言われるのにも慣れてるし」 戦闘中にミスって死なれるよりはいい・・・彼らの中では暗黙の了解とされ、求められれば出来うる限り応えてやれと。 (まぁ、応えすぎで死に掛けたこともあったけど) 足元に向けていた視線を上げ、アーシャの背中を見詰める。 「アーシャ様って純粋だから」 隣でボソリと成瀬が呟いた。 「え?」 「アーシャ様・・・ヤキモチ妬いてらっしゃるんじゃねぇ?」 END

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