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第1話
白い僧侶の衣装に身を包んだ美少年は、絶海の孤島にそびえたつ高い塔の最上部でため息をついた。
外を見やれば暗い海。暗い空。
美少年は髪と同じミルク色の白く長いまつ毛を閉じる。
強力な魔力を持つがゆえに魔王の花嫁兼食料として攫われ、ここへ幽閉されてしまったのだ。
「なんとか脱出せねば…、この僕を食べた魔王の力など、想像するだけでも恐ろしい」
美少年の魔力は封印されてはいるが、日々少しずつ空間になじませることで多少の融通は効くようになっていた。
魔王が大国の方へ出向き、監視が手薄になっている今がチャンスだ。
それなりに豪勢ではある部屋のベッドに腰かけ、美少年は両手を伸ばして力をこめる。
すると目の前に両手に乗るほどの球体が現れた。
水晶玉に似たそれには、間もなくどこかの景色が映される。
一番近いであろう大陸にある海沿いの街の景色であった。
行き交う大勢の人々は平和に暮らしているように見える。
まだ魔王の手にかかっていないその平和な光景に少し安堵の笑みを浮かべ、美少年は街の隅々まで見やる。
「勇者を探さねば…、僕をここから解放してくれる勇者を」
魔術を持つものはそう多くない。魔術にもそれぞれの癖があり、波長を合わせることはなかなかに難しいものである。
美少年は自分の背格好に近い”魔力のない”少年を探し、そこに自らの魔力を貸すことで動かそうと考えていた。
一通り街を見たが、人が多いわりにあまり見つからない。
海沿いの街ということもあってか漁業や商人の男たちでごった返しているようだ。
少し裏路地に映し変えていく。途端に人通りが少なくなってしまった。
そのうえ何やら怪しい雰囲気の路地の入ってしまったようであった。
違法薬物の密売人らしきもの、酔っ払い、華やかな大通りとは裏腹に大きな町の闇の部分が映し出されていた。
何とも言えない気分になりながらも進んでいくと、薄暗い路地の中で風に揺れる、明るい金色が見えた。
ふわふわとした髪は淡いピンクゴールド、大きな瞳が可愛らしい色白の美少年であった。
「ふむ…、頭が悪そうなのは似てないけれど、背格好は近いものを感じるな」
幽閉された美少年はもう一度手を前に出し力を込めた。
目の前にうさぎのような姿の二足歩行をした生き物が現れた。
「お前の名前はキャロット、僕の力を込めた。あの少年のもとへ行き僕からの指示を伝えるんだ」
うさぎは一度大きく跳ねて
「わっかりやしたぁ!」
と、元気よく返事をした。
美少年はキャロットを水晶の前に持ち上げる、するとキャロットは一瞬にして水晶の中へ吸い込まれていった。
「頼むぞ、僕が魔王に食べられては世界を壊滅させられかねん。食われる前に僕を救い出してくれ…勇者」
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