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1.愛類化

「おい! テメ何しやがる……!!」 実の弟に玄関先で押し倒され、悪ふざけはやめろと声を荒げるが、腕を押さえる力が弱まる様子は無い。 なんなんだよコイツ! いきなり押し倒してきやがって! なに考えてっか分かんねえぞ……! 「(るい)! 離せっつってんだろ! いい加減にしねえとブン殴るぞテメエッ!!」 とても殴れそうにない状況だが、押さえつけられた腕に力を込めながら、なんとか危機から脱しようと試みる。 短めに整えられた髪は、根本から金色に染め上げられており、玄関先へと射し込む光によって、その輝きは更に増していた。 「ま、待て塁ッ! テメ何する気だ……!」 「何って、セックス」 「なっ……!」 耳に幾つも飾られたピアス、喧嘩に強く腕っぷしに自信を持っていたはずが、今は一つ違いの弟に簡単にねじ伏せられている。 高校三年と二年、塁は女受けしそうな甘い顔立ちに笑みを刷きながら、満足そうに此方を見下ろしていた。 「バッ……、バカだろお前! なに考えてんだアホ! 俺は男だぞ!? つうかテメエの兄貴だッ!!」 「知ってる知ってる」 「しかも此処は玄関だぞ! んなとこでテメなに考えて……!」 「そんなの今更じゃん。まあ、そうやって焦っちゃう兄貴も可愛いけど」 「はぁっ!? テ、テメッ! 馬鹿にしてんのか!!」 此方が何を言ったところで聞く耳持たず、塁はさらりと文句を流していきながら、手際良く制服を脱がしにかかる。 兄に比べて少し長めの髪、光を背に受けながらキラキラと、茶髪が目映く揺れている。 中身は正反対の二人、けれども両者ともに人気を博しており、学内での評判は極めて高かった。 「塁ィッ! やめろっつってんだろテメエッ! ボタン外してんじゃねえ~ッ!!」 「はいはい、騒がないの」 「なんだその態度は~ッ!! 塁のくせに生意気だ!!」 「曖希(あいき)兄ちゃんてば子供みたい。でもそういうとこが、すげえ可愛いんだよなあ」 一つ一つ外されていくボタン、じたばたと暴れながら抵抗するも、今のところ塁にはなんの効果も無い。 チクショウッ! ムカつく……!! 「兄貴~、もうちょっと静かにしなきゃダメでしょ?」 鋭い睨みをものともせず、これ以上の侵攻を防ごうと手を掴まれても、塁は尚も微笑みながら、一気に両腕をまとめにかかる。 更に締めていたネクタイを外し、自由に動かせぬよう縛り上げ、また満足そうに此方を見つめてきた。

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