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宇佐木くんの恋・1
「来年の春、結婚するんだ」
いつもと同じように、俺、宇佐木葵 はメシを食いに保健室に来た。
小野先生は俺の登場に『待ってました』と言わんばかりに立ち上がり、タバコ休憩へ向かう。そこまでは、本当にいつもと同じだったんだ。
そこからは、普段と違った。保健室から出て行く寸前、先生は俺を振り返ってそう言った。
「……えっ?」
「だからもう、お前もここには来るな。いつまでも俺を追っかけてても正直時間の無駄だからな。高校生は高校生同士で青春しとけ。俺はお前に何もしてやれない。……じゃあな」
「小野せんっ……」
最後まで名前を呼ぶことすら許さないかのように。先生は俺を置いて保健室を出て行った。
「結婚て……ははっ、マジかよ……」
こんな感じで本当にあっさりと、めずらしく2年も続いた俺の一途な恋は、唐突に終わりを告げたのだった。
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