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「おい馬鹿わんこ、今の写メまさか全部シンジに送ってねーだろうな……」
「全部送ったが?」
「おいっ!!ふざけんな、とりあえず一応本人に確認するもんだろうが!!」
「しただろう、撮っていいかって」
「いや、撮ったやつ見せろよ!!」
「ほら」
とりあえず、千歳様とのライン画面を見せた。これで一応本人に『可愛い』って伝えたことになるだろ。(代理と言えど、理音以外の男を可愛いと言いたくない)
俺のスマホ画面をマジマジと見つめた宇佐木はみるみる真っ赤になっていく。
あれ?本当に結構マジなのか?
「勘弁してくれよ、もう……」
しゅううう、と湯気でも出しそうな顔でゴンっと机に突っ伏す宇佐木。こいつがこんなに動揺してるの、初めて見たな。
「……お前ら付き合ってるんなら、そんなに恥ずかしがらなくてもいいだろ」
「はぁ!?誰が付き合ってるって言った!?」
「理音が、昨日千歳様本人から聞いたって言ってきたぞ」
あれ?違うのか?でも、理音が勘違いなんてするわけないしな……。
「違う!!そりゃちょっと声かけられてはいるけど……エッチもしちゃったけど……あの千歳シンジが俺みたいな一般人に本気になるわけないだろ」
はあ?一般人??
「そんなこと言ったら理音と付き合ってる俺はどうなる」
「お前らは幼馴染だろうが!モデルのRIONと付き合ってるわけじゃねーだろお前はっ!」
それはそうだ。モデルのRIONはあくまでモデル。理音とは全然違う。でも、モデルのRIONだって俺の可愛い理音に違いない。全部ひっくるめて、俺は理音を愛している。
「俺にとって千歳シンジは超人気モデルだ。それ以外の顔なんて知らないし、知ろうとも思ってねーよ。もともとファンだったから、言いよられて嬉しいけど……でもきっと飽きたらすぐポイ捨てされるだろ」
今の宇佐木の言葉に、何故か俺がむっとした。
「……俺は、千歳様がそんな男だとは思わないぞ」
「お前は理音くんをエサに懐いてるだけだろ。大体なんだよ千歳『様』って。お前の下心なんて丸わかりなんだよ、この馬鹿わんこ」
「………」
それを言われたらおしまいだ。でも、俺には千歳が……いや、千歳様がそんないい加減な男には思えないんだがな……。
まだ付き合いも短いし、俺が奴の何を知ってるんだって言われたらそれまでだが。大体、最初はライバルだった男だしな。
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