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そして、何故かシンジの顔がゆっくりと近づいてきて……
「ンッ!?」
ホラーハウスの廊下のど真ん中で、触れるだけの優しいキスをされた。
「な、な……」
何考えてんだよ!?と言いたかったのに、薄ぼんやりとしたライトに照らされたシンジの顔があまりにも綺麗だったから、何も言葉が出てこなかった。
また、心臓がドキドキしてる……それがホラーハウスのせいなのか、シンジのせいなのか、俺にはもう分からない。
「エッチなこと考えてると、オバケは逃げちゃうんだってさ」
「んっ……ふっ……」
もう一度、今度は深いキス。軽く抱きしめられて、身体が硬直する。
暗闇とはいえ、オバケ役とか監視カメラとかで誰かに見られてるかもしれないのに……いや、見られてる。きっと見られてる。
唇を離されると、軽く息が上がってた。
「……俺がこんなに余裕なのは、今日ずっとあおいとエッチしたいって思ってるからかな」
「……!」
「あおい、好きだよ」
……俺、これ知ってる。吊り橋効果ってやつだ。恐い状況のドキドキを利用して、一緒にいる相手に好きだって勘違いさせるやつ。
今、俺がドキドキしているのは……
「あおい……俺のこと、好きになってよ」
「シンジ……」
「遊びじゃないよ、たいせつにするから……」
シンジの本心なんて分からない。もしかしたら、これが彼のいつもの手段なのかもしれない。好きになった女の子を落とすための。
だってこんな状況、落ちない方がおかしいだろ。けどこんなことしなくたって、
俺は、もう……
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