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*  無理矢理連れて行かれたホラーハウスで大泣きして、千歳くんと宇佐木と別行動することにした。泣いてる顔をあんまり人に見られたくなかったのと、昂平が―― 『あのふたりホラーハウスから出てきたらきっとラブラブになってるぞ。吊り橋効果ってやつだ。邪魔しないように俺たちは別行動するぞ、理音』  なんて言うから……  でも、本当にうまくいったのかな?  ホラーハウスを出た俺たちはメリーゴーランドだの観覧車だの普通に遊園地を楽しんでるけど、宇佐木たちには全然はち会わないし……別んとこに行ったのかなぁ。  するとまた、昂平が言った。 「ホテルに行ったに決まってるだろ」 「なんでこんな昼間っから!?」 「当たり前だろ、好きな奴は何時だって抱きたいに決まってる。千歳も可愛い宇佐木を見て限界だったんだろ」 「可愛いって……」  どっちかっつーと宇佐木は美人系だけどな。  昂平は俺が言いかけたのを変に勘違いしたらしく。 「違うぞ理音!千歳から見て可愛い、だ!俺は宇佐木のことなんて毛ほども可愛いなんて思っていない!!俺が可愛いと思うのはこの世で理音だけだ!!あ、あとカノン!!」 「あ、あぁそう、ありがとう……」  何焦ってんだこいつ。今更宇佐木に妬いたりしねーよ。  だって宇佐木、もう十分千歳くんにベタ惚れだもんな。四人でいるときも、ずーっと千歳くんのこと見てたし……。  小野先生に恋してた時のような、うっとりとした目で。 「理音?」  気付いてなかったのなんて、千歳くんだけじゃん?それほど余裕がないなんて、いつものあの人らしくないけど。  でも……。 「もっかい最初のジェットコースター乗ろーぜ、昂平!」 「え……俺はそろそろ帰ってお前を抱きたいんだが」 「そんなの夜だ夜!せっかくタダ券もらったのに勿体ないだろ!」 「(俺よりタダ券が魅力的なのか理音……!)」  きっと、もう大丈夫だよな。あの千歳シンジが落とせないはずはないって。  宇佐木も……千歳くんが真剣だってこと、わかってくれるといいな。  でも、宇佐木なら大丈夫か。  だって宇佐木だもん。エスパーみたい、だっけ?(昂平が言うには) 「ふふっ」 「理音、さっきからなんか楽しそうだな?」 「楽しいよ。お前と一緒なら、どこだって楽しいよ」  ちょっとわざとらしいけど、一応、本当だ。 「……!!じゃ、家に」 「却下」  月曜には宇佐木の初ノロケ話が聞けるかもしれない。それを想定してわくわくしながら、俺は昂平の手を引いて次のアトラクションへと走った。 宇佐木くんと千歳くん 【終】

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