53 / 53

②電話待ち。:side新

「はい」  耳元で聞こえる中山くんの声が震えていた。  俺の方も伝染して声が震えそうになる。それと同時に、電話してくれたことが嬉しくもあり、ほっとした。 「よかった、電話してきてくれたんだ。押し付けがましかったかなって思ってたんだ」 『――っつ』  俺が言うと、中山くんはほんの少し息を詰まらせたようだ。  泣いてる……?  それほどまで苦しいのだろうか?  どうにかしてやりたい。 「眠れない?」 『はい』 「ご飯は食べたのかな?」 『はい』  涙声で頷く中山くんは必死だった。  もしかして、俺に電話切られるんじゃないかって思っているのか?  そんなこと、あるはずないのに。 『せっ、先生は? ご飯……』  可愛い。声がひっくり返ってる。  頑張って話しを続けようとしているんだね。  可愛いなぁ。 「うん、食べたよ。っていっても、俺の方はインスタントラーメンなんだけどね」  気が付けば、俺は椅子から移動してベッドに寝そべっていた。  可愛いカイリの声を聞きながら、もっと話しをしたくて会話する。 『ぼ、僕も料理は苦手です……」 「きっと俺ほどじゃないでしょう? 中山くんは料理作れるの?」 『え、えと……お味噌汁とか。焼きめしとか、です』 「そうなの? そんなに作れてすごいね」 『あ、えと。よかったら……作ります』 「え?」 『あ、いえっ! あのっ!!』  ……焦っちゃって可愛いな……。  うん。  食べてみたいな。  カイリの手料理。  エプロン姿も。  きっと可愛いんだろうな。  慌てている君の顔が見たい。  電話だけじゃなく……。 「じゃあ、また今度のお休みにでもお願いしようかな」  いつか、海里と呼べる日を心待ちにして――……。 『は、はいっ!』  《電話待ち。/完》

ともだちにシェアしよう!