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第1話・眠れないッ!! ⑤

 ラジオ番組は今ちょうど始まったばかりみたいだ。  響きがいいステレオの音源と一緒に20代くらいの若い男の人の声がした。 『夜はだいぶん過ごしやすくなりました。秋の夜長はまだはじまったばかり。今日もしっとり楽しくいきましょう』  司会を務めるパーソナリティーの声の調子は明るいのに、なぜだろう。  バックに流れているジャズと同じで、すごくしっとりしていて、とても落ち着く......。  僕はさっきの焦りも忘れて、静かに布団にもぐり込んだ。  そうしたら......。  あれ?  あれれ?  まぶたが少しずつ......落ちていくんだ......。  その夜、僕はFMをつけたまま、うつ伏せになって、意識を手放した。  遠くから何かを話している人の声と一緒に、心地いい小鳥の鳴き声が僕の耳に届いた。  カーテンの隙間からは朝日が差し込んでいる。  外はとても明るかった。  頭上にある時計を見れば、時刻は朝7時。  どこからか聞こえる音の方を見ると、CDコンポの電源がつけっぱなしになっていた。

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