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第1話・眠れないッ!! ⑨
相手もきっと根暗な僕なんて興味ないだろうし......。
だから校長の言葉でも、そうなんだっていう感じであっけらかんと話を聞くだけだった。
教育実習生の声を聞くまでは――......。
僕の意見が180度ぐるりと変わったのは、そう。
朝礼が終わって教室に戻ったあと、朝のホームルームで彼の声を聞いてからだ。
「はじめまして」
そう言った彼の声は――明るく弾けているふうなのに、しっとりとした低いトーン。
僕の救世主、アラタさんの声に似ていた。
しかも、だよ?
名前は井上 新 で、臨時パーソナリティーをしていた人と同じ『アラタ』なんだ。
びっくりして顔を上げたら、ものすごくカッコいい人だった。
僕よりもずっと背が高くて体型はすらっとしてて、どこかのモデルさんみたいに整った顔立ち。
遠くからでもまつ毛が長いっていうことだってわかる。
髪は細くて色は茶色。
もしかしてもしかすると、彼はアラタさんなんだろうか。
だけど、初対面で突然『アラタさんですか?』なんて訊 けるはずもない。
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