10 / 53

第1話・眠れないッ!! ⑩

 第一、名前なんて同じ人はたくさんいるし、声だってたまたま似ているのかもしれない。  アラタさんと井上先生が同一人物であるはずがない。  世間はそんなに狭くはないハズだ。  それに、同一人物かもしれないとか期待して違った時、とても恥ずかしい。  そう自分に言い聞かせても、アラタさんの声が聞けなくなって穴があいたように感じたスースーする僕の胸は、どこかぽわんとあたたかくなった。  あと、ちょっぴり落ち着かなくもなった......。   臆病な僕は井上先生にそのことを訊けないまま、ただ悶々(もんもん)と日々を過ごしていた。  おかげで僕の眠りは前よりもずっと浅くなってしまった。  そんなある日のことだ。  僕の体がとうとう悲鳴をあげたんだ。  睡眠できないっていうことがピークに達してしまった。  視界は黒と灰色のモザイクが広がって、そうかと思ったら、次の瞬間には、視界が真っ暗闇になった。  昼休憩の時。  僕は廊下で倒れてしまったんだ......。

ともだちにシェアしよう!