33 / 53
第3話・発覚! コイゴコロ。 ⑪
それって、それって......。
パクパク、パクパク。
僕の口が開閉を繰り返す中――。
「つまり、こういうこと」
先生はそう言うと、僕の腰を引き寄せた。
そうして、僕の唇に柔らかい何かが触れたんだ。
僕の口に触れたソレが離れる時、リップ音がした。
そこではじめて、僕は先生とキスしてたっていうことに気がついた。
顔が熱いから、真っ赤になっているのは自分でもよくわかる。
恥ずかしくて俯けば、だけど先生は逃してくれなかった。
人差し指で僕のあごをもう一度持ち上げて――。
「ん......」
さっきよりもずっと長いキスをした。
信じられないけれど、これが僕の恋物語。
誰よりも引っ込み思案で、誰よりも他人と話すことが苦手な僕。
だけど、こんな僕でもこうして素敵な人が現れるんだもん。
世の中も捨てたもんじゃない。
心からそう実感した出来事だった。
それから、井上先生は無事に3週間っていう教育実習の期間を終えて大学に戻ったけれど、僕はまったく寂しくない。
ともだちにシェアしよう!