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第3話・発覚! コイゴコロ。 ⑪

 それって、それって......。  パクパク、パクパク。  僕の口が開閉を繰り返す中――。 「つまり、こういうこと」  先生はそう言うと、僕の腰を引き寄せた。  そうして、僕の唇に柔らかい何かが触れたんだ。  僕の口に触れたソレが離れる時、リップ音がした。  そこではじめて、僕は先生とキスしてたっていうことに気がついた。  顔が熱いから、真っ赤になっているのは自分でもよくわかる。  恥ずかしくて俯けば、だけど先生は逃してくれなかった。  人差し指で僕のあごをもう一度持ち上げて――。 「ん......」  さっきよりもずっと長いキスをした。  信じられないけれど、これが僕の恋物語。  誰よりも引っ込み思案で、誰よりも他人と話すことが苦手な僕。  だけど、こんな僕でもこうして素敵な人が現れるんだもん。  世の中も捨てたもんじゃない。  心からそう実感した出来事だった。  それから、井上先生は無事に3週間っていう教育実習の期間を終えて大学に戻ったけれど、僕はまったく寂しくない。

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