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第3話・発覚! コイゴコロ。 ⑩
……それは、どこかで聞いたことがある内容。
僕はポカンと口を開けたまま、井上先生の言葉に耳を傾ける。
そんな僕の頭には、『まさか』っていう思いが敷き詰められていた。
「――そんな時だったっけ......。俺の声で眠れるようになったっていう子から手紙がきたんだ。こんな形で引き受けた臨時パーソナリティーだったけど、それでも誰かの役に立つんだとわかったことが嬉しかった」
まさか......。
やっぱり、それって......それって......。
『アラタさん』は、『井上先生』だったっていうこと?
驚きで口いっぱいに広がる唾をゴクンと飲み込むと、井上先生はまた話を続けた。
「その子とはもう会えないと思っていたんだけれど、まさか教育実習で自分が行くことになった学校で出会えるなんて思いもしなかった。君に出会って話をした時、俺がどんなに驚いたかわかる? 話してみると、とても可愛いし、素直でスレてなくて......俺の理想の子どストライクなんだもん。もう離れたくないって思ったら、つい自分の電話番号まで教えてしまって、強引だったから引かれたかな、とか思ったり......」
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