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第一話 青い薔薇

   青い月光に照らされて目覚めた清涼は、目の前に広がる光景に息を飲んだ。   すぐ目の前に……晴れ渡る青空の色をした柔らかな花弁を夜風に揺らして、青い薔薇が咲いていた。  美しい光景だった。  まるで……この世ではないみたいな甘い花の香りが漂うここは……一体どこだろう?     「やあ。お目覚めかな?」  突然掛けられた声に驚いて顔を上げれば……  漆黒の外套を纏った、見た事のない男がすぐ傍に立っていた。   「お前は…誰だ?」  人ではない……すぐに分かった。  この目の前でにこやかに笑っている、年若い男からは濃い死の匂いがした。  何故、自分がそれを嗅ぎとれたのか疑問すら浮かばなかった。  ただ本能が命ずるまま……警戒する自分に男は苦笑した。 「そう警戒しないでよ?私は…まあ、君のお仲間といったところさ!別に君をどうこうするつもりは全く無いんだよ?見事な青い薔薇が咲いていると…夜の獣たちが騒いでいたからね…!それを見にきたんだよ」  本当に美しいねぇ……!そう言って隣に立つ、ほっそりとした女に微笑めば、女はそっけない口調でそうね。と涼やかな声で同意を示すだけだった。  相変わらず、君は冷たいなあと、ちっとも気にしてないように男は言うと、清涼に向き直り再び笑顔になった。 「……ようこそ夜の国へ…!青い薔薇の花言葉は神の祝福…奇蹟。そして不可能だって知っていたかな?この世に存在しないはずのその花が咲くとき、この世とあの世の境に橋が架かるのさ!さて…君は何を望むのかな?神への祈りを捨て、死すら乗り越えてこの世に繋ぎ止められた、まさに奇蹟の存在である君の望みは…きっと叶うだろう。何故なら……」  男の言葉に、清涼は目を瞠った。  そんなことがあるのか……?いや、あり得ないとしか思えなかったからだ。  だが……それでも清涼は望んだのだった。たった一つだけ、望むことがあったのだ。    俺の……望みは、願いは唯一つだけ。  人としての限界を超えて、神に背いても……それでも望むのは……

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