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第10話
朝食を済ませ、隆明さんに服を借りた。
着替える為に布団から出て、ワイシャツ一枚に下はなにも履いていなかった事に気付いて、顔を真っ赤にして講義した俺に対し、隆明さんは男のロマンだろう、とニヤついて応えた。
「もう、まだ拗ねてるの?」
「あんなにも恥ずかしい思いをした俺の気持ち、隆明さんにはわかりませんよー。」
「ほら何か欲しい物買ってあげるから、そろそろ機嫌直してよ。それとも、ホテルのディナーの方が良いかな?」
「そう言う問題じゃないです!」
拗ねてぐちぐち言う俺を強制的に着替えさせて、隆明さんは高級車に押し込んだ。今は県で一番大きいモールへ向かう道中。
さすがと言うべきか、シートは座り心地が良いと言うレベルではなく、もう立ち上がりたくないと思える程。車内の香りも酔わない程度に抑えられていて、BGMには音量を抑えたムードのある洋楽。
「到着〜!ちょっと待ってて。」
一発で駐車し、エンジンを切って車を降りた隆明さんは、助手席の方へ回り込んだ。
「どうぞ。頭気をつけて。」
「なっ!……そういうの、よく恥ずかしげもなく出来ますよね、」
「なんで?」
「だって俺、男ですよ?か弱い女の子じゃないんですから……」
女の子が喜ぶ気配りが様になっている。きっと隆明さんにとっては何気ないことなんだろう。
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