21 / 132

第14話

 週末は馴染みのバーに通うのが日課。 昨日まで仕事で出張に出ており、ここへ来るのは久々。出張で離れる事や、次に来る時にはお土産を渡す事を伝えていたので、約束通り手土産付きだ。  「ますたぁなんか酒〜」  「飲み過ぎよ。」  駅から歩いて5分のところにある『BAR 404』の扉を開ける。開けてすぐの地下に続く短い階段を降りて行くと、カウンターで接客をしているマスターに手招きされた。マスターはカウンターに突っ伏した男を介抱しているようだった。  「あ、ほら。彼来たから、ちゅうしてもらいな。」  「なに、マスター。知らない間に俺この子とキスする事になってんの?」  一先ず男の隣に腰を落ち着け、二タニタ笑うマスターに怪訝な眼差しを贈る。そう言えば、と手にしていたお土産を渡し、軽めの酒を一杯頼んだ。  「この子、元々ノンケなんだけどね、酷い男にハマって今日その男の結婚式だったの。慰めてあげてよ、そういうの上手いでしょ?」  「やだな、俺は紳士だから。ちゃんと気に入った子にしか手は出さないよ?」  「あら、守備範囲バリ広なのね〜」  絶賛失恋中だと言う男。  慰めろ、って…女々しくすぐ泣いてしまう感じの子はタイプじゃないんだけど。  観察するように目をやっていると、突然男がムクリと顔を上げた。

ともだちにシェアしよう!