22 / 132

第15話

 男は最近成人したばかりだろうか、目が大きく二重幅も広い。口は小さく、しかしぷっくりしていて赤く色付いている。まだ幼さの残る可愛らしい顔つきの子だった。  突っ伏していたのは、泣いていたわけでも寝ていたわけでもなく、マスターに酒を止められ、むくれていたようだ。  「お、起きた?マスター、とりあえずこの子に水あげてよ。」  泣いているわけではないのなら話は別だ。この子さえ良いのなら、話くらいは聞いてあげよう。マスターから渡された水を片手に、水だけど飲める?と訊ねると、男がやっと口を開いた。  「似てる……」  「ん?俺、誰かに似てる?」  俳優やタレントなど、今まで似ていると言われた事はあまりなかった。珍しいなと思いつつ次の言葉を待っていると、ぽーっと見蕩れていたような顔から一変、今度は困った顔で謝った。  「っすみません、友人にちょっと似てたから……」  「そう?それよりさ、まだ飲めるなら、俺と飲み直さない?」  友人に似ていたと言った男。きっとそれは今日式を挙げたと言う男にだろう。最初の見蕩れたような顔が物語っていた。嫉妬と言うには時期尚早だろうが、少なからずそれに似た感情が過ぎった。  気付けば俺は男を家に招き、その潤んだ目をこちらに向かせたいと躍起になっていた。

ともだちにシェアしよう!