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番外編1

 「隆明さんのお仕事って、具体的に何をしてるんですか?」  「んー、そうだなぁ、建築関係全般を請け負う小さい会社なんだけどね、俺の仕事は社員が働きやすい環境を作る事、かなぁ。」  「え?もしかして隆明さん…え??」  「色々言ってない事が多すぎたね。祖父だけじゃなく、俺も起業してるんだ。」  ぽかん、と口を開けて固まってしまった俺に対し、その顔可愛い。とデレデレ顔の隆明さん。  俺達はもっと会話をするべきだ、うん。  「じゃあ、このマンションとかも……?」  「流石にここは買ったよ。でも、内装は少しイジらせて貰ったかな。ほら、キッチンとか本当は壁で囲まれてたんだけど、無くしてアイランドキッチンにしたからリビング広く感じるでしょ?」  「すごい!そんな事も出来るんですね!」  「キッチンの壁を無くした本当の理由は、一々壁を避けるのが面倒そうだなぁ、って言う理由なんだけどね。」  「隆明さん、なんだかそれってオジサンくさい……」  あ〜今の傷付いた、太一くんがキスして癒してくれないと、って笑う隆明さんは、オジサンとは程遠いイケメン。だけど、中身にたまにオジサンが現れる。そんなところも好きなんだけど、  「さて、今度は太一くんの番だよ。どんな仕事してるの?」  「俺はアパレルの企画開発部で、スポーツシューズ部門の担当やってます。」  「へぇ〜だからオシャレなんだね。」  「そうでもないですよ、俺は服にはあまり関心がないので、社割で適当に。」  あ、しまった。気をつけようと思ってたのに、つい癖で適当にって言ってしまった。  「スポーツシューズ担当って事は、太一くんは学生時代何かスポーツをしてたの?」  「サッカー少年でした。足を壊して、大学では幽霊部員してましたけどね。」  「そうなんだ、スポーツが大好きなんだね。」  「サッカーが俺の青春、みたいな典型的なサッカー馬鹿だったんで。だから、今は足に優しいシューズを作る為に日々頑張ってます。」  「因みに、今まで太一くんが担当した商品ってどんなのがあるの?」  「んー、大体企画発案者が主体となってグループで開発に向けて色々していく感じなんですけど、俺が企画したのは…コレとか。関わったのはこのシリーズとかですね。」  ささっと自社のウェブサイトを開いてみせる。  俺が企画発案したのは、足に掛かる衝撃を吸収し、和らげると言う物。普段何気なく行っている動作も、意外と負担が掛かっていて、それが積もり積もって足の怪我に繋がる事がある。そういった怪我を少しでも軽減出来ないかと提案した。  「え!このシューズ、有名なやつだよね。デザインも多くて、色んな選手が使ってるのをテレビでよく見るよ。これ、太一くんが作ってたんだ。何だか感慨深いなぁ。」  「へへ、本番に使うには色々とまだ足りない部分があるんですけど、練習用シューズとしては沢山良い評価を貰ってます。」  「へぇ〜、ちゃんと仕事してるんだ。」  「俺だって、可愛いだけの男じゃないです!バリバリ働いてますよ。」  そうだ、今度は隆明さんのような、働く大人の男性に合うようなシューズを作ってみたい。今はスポーツシューズ専門だけど、疲れにくい革靴とか、新品に付き物の靴擦れを避けられるような。 週の殆ど一日中履いていないといけない社会人にとって、仕事用の革靴は快適でなければならない。  「俺、もっと成長しますから!」  「成長した太一くんの姿、楽しみにしてる。」 ―――――  隣で楽しそうに話をする太一くんを見て、こちらも楽しい気持ちになれる。心からの笑顔が可愛い。目が細まって、口角がちょこんと上がる。  今この瞬間、俺の恋人はこんなにも可愛いんだー!と叫んで回りたいほどに可愛らしい。  そんな太一くんが、まさか有名アパレル企業で有名なシューズを企画開発していたとは。 本当に可愛いだけの子じゃないんだなぁ。若い子の成長スピードは早い。俺も置いて行かれないように頑張らないと。  手始めに、庭で広々とサッカーが出来るような一軒家を設計してみよう。 近頃は公園でのボールの使用は限られているし、自宅で友達を呼んで出来るような広さが作れるのなら、それぞれの家庭の望む自由な庭作りも出来るだろう。  いつか、太一くんと暮らす家を建てる時の為に、もっと色んな話をしていこうね。 end

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