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番外編3

 「そう言えば太一くん、誕生日クリスマスなんだね。」  「そうなんです。毎年友達は彼女と過ごすので、祝われる事ってあんまりないんですけどね〜」  きちんとお付き合いをしましょう、と話をしてから、俺達はお互いに誕生日や出身地など、今更過ぎる自己紹介をした。  「今年は俺が盛大に祝ってあげるからね。」  「ホントですか?あ、でも俺、隆明さんとケーキを一緒に食べられるだけで、一番幸せな誕生日になります。」  「はぁもう、太一くんかわいい。」  「ふふ、隆明さん、顔溶けてますって。」  ソファに隣同士座ってテレビを見ていたのに、隆明さんは可愛い可愛いと俺を膝に乗せ、首元に頬ずりする。  「本当に行きたいところとかないの?したい事とか欲しい物とか、」  「うーん、結構真面目に考えたんですけど、隣に隆明さんが居れば、何でも良いです。適当とか投げやりとかじゃなく、本当に。強いて言うなら、隆明さんと1日一緒に居る事が、俺の一番したい事です。」  俺は、勝手に隆明さんと1日過ごす前提で、密かに有給申請取得済みだ。職場の皆が俺の誕生日を知っているわけではないが、世間一般ではクリスマスなわけで、上司や同僚からめちゃくちゃに弄られた。入社してから女の影一つなく、毎年イベント事で有給申請をする事がなかったので、その反応は当然と言えば当然だ。  「何時も通り、土日も休みなの?」  「はい!」  あ、嬉しさを全面に押し出して頷いてしまった。これじゃあ当然土日も会えますよね?と言っているようなもんだ。違うんです。違うくはないけど、違うんです。そうだったら良いなぁ、って言う願望が全面に押し出されただけで。  「じゃあ、ちょっと遠出しようか。2泊出来るくらいの準備してて。」  「え!?旅行ですか?それって旅行ですよね!?」  「うん。はは、行く前からそんなに喜んでくれるなら、当日はきっと声が出ないと思うよ。」  んん〜っ!なんて謎の音を発しながら、クッションを抱き締めて足をバタバタさせる。  なんか俺、この人と出会ってから自然と素直になれている気がする。恥ずかしんだけど、それよりも先に素直な感情が表に出てしまう。  「隆明さんっ!だいすきです、」  「もう、最近の太一くん可愛くて困るよ。」  「へへ、旅行、楽しみにしてますね。」  「寒いところだから、コートとマフラー忘れないようにね。」  寒いところかぁ。ホワイトクリスマスになるかな?写真映えするし、あわよくば旅行先の風景を後ろにして、隆明さんと写真を撮りたい。インカメで撮る練習をしよう。  誕生日の旅行の話は、また今度。 end

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