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第60話
「俺、誰かを好きになる事はあっても、こんなにも人に愛されることって、今までなかったんです。」
「………うん。」
「恋って、一人でもできるけど、恋愛は一人じゃできないんです。俺、隆明さんとこんなにも幸せな恋愛ができている事が、心から嬉しくて、嬉しすぎて苦しいくらいなんです。」
確かにマサへのそれは恋だった。でも、隆明さんへのこの気持ちは、俺一人で育んだ物ではない。隆明さんから貰った優しさや愛情で、抱え切れない程にどんどん育っていった物なんだ。
「たまにね、ここのところが、ぎゅーって締め付けられるんです。隆明さんが好きだなぁ、会いたいなぁ、って。こんなに苦しいくらいに好きなのは、隆明さんだけです。」
胸を撫でながら言うと、その時の感覚が蘇る。喉が詰まって、ドキドキして、心がいっぱいになる。そんな恋愛が出来るのは、今までも、これからも、目の前の愛しい人だけなんだ。
「……いまはもう、本当に好きじゃないの?」
「好きじゃない…訳じゃなくて、好きの意味が変わったって言うか、友達としてはマサが一番なので。」
どうやったって、好きだった気持ちは無かった物には出来ない。だけど、人の気持ちは変化して行く物だ。俺の隆明さんへの思いが、大きくなっていくように。
「はぁ、どうしよう…太一くん、今からしても良いかな?」
「へっ!?」
「そんな幸せそうな顔で、好きだなんて言われたら、我慢出来るわけないでしょ。」
抱き締められたその温もりは、今の俺が一番欲している物で、何よりも手放したくない物。ずっとずっとこのまま、溶けて一緒になれれば良いのになぁ。
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