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第59話

 「わりぃ、並んでて結構掛かった」  「おっ、おかえり、大丈夫、飲んでたし、全然、そんなに…、すぐだった!」  「そう?つか、太一なんか変じゃね?」  もしも俺が女の子だったら。雅人とどんなことをしたいか。どこに行って、どんな話をして、どんな将来を語るのか。  そんな妄想に耽っていたら、雅人がスッキリした顔で帰ってきた。  「や、お前のカノジョから電話来てさ、めっちゃ鳴ってたから出ちまった。ごめん。」  カノジョ。女の子だからカノジョになれる。例え何かの間違いで雅人が俺を好きになってくれたとして、俺じゃあカノジョにはなれない。  悲しい…虚しい…寂しい…苦しい……  「マジ?全然良いけど、ならそろそろ帰るか?」  「えっまだ時間あんだろ!それにっ、あの…ホラ…料理!まだ来てないのあるしさ!」  「そういやあそうだったな。メールだけしとこ〜」  きっと、カノジョからの電話は“会いたい”と言う要件なんだと察したんだろう。帰ると言われ、グチャグチャになっていた心がさらに乱れた。  もうすぐ他人の物になるのなら、残りの少ない時間ぐらいは俺に割いてくれ。俺の為に、俺だけを見て、その笑顔を俺に向けて欲しい。  「お前、マサくんって呼ばれてんだな。俺もマサって呼ぼうかなぁ」  精一杯のイジワルと、たくさんの嫉妬で―

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