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第61話
「今夜は隅々まで君を可愛がりたい。良いだろう?」
「う…良いですけど、隆明さん、その前に俺……もう一つ、聞いてほしい事が、あるんです………」
マサとの思い出を語った後、俺は今がタイミングなんじゃないかと思った。
きっと、キス一つでも許してしまえば、俺は隆明さんの熱を拒む事は難しい。ヘタレな自分から、この話を切り出す事も。
「お預けかい?聞いてあげるよ。もう一つ、って?」
「……俺の、家族の事です。」
「家族?」
俺と、俺の家族を変えてしまったあの出来事から、その事を思い出さないように必死に生きてきた。
たった少しの影でも、記憶の隅から引っ張り出すと、きっともう止まらない気がしたんだ。またあの時の孤独や苦しみに襲われる。もうそんな生活はしたくないんだ。
だけど、隆明さんには知っていて欲しい。俺のワガママでただのエゴだってわかってるけど、
「俺………両親を殺したんです。」
「………ころ、した…?」
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