77 / 132

第61話

 「今夜は隅々まで君を可愛がりたい。良いだろう?」  「う…良いですけど、隆明さん、その前に俺……もう一つ、聞いてほしい事が、あるんです………」  マサとの思い出を語った後、俺は今がタイミングなんじゃないかと思った。  きっと、キス一つでも許してしまえば、俺は隆明さんの熱を拒む事は難しい。ヘタレな自分から、この話を切り出す事も。  「お預けかい?聞いてあげるよ。もう一つ、って?」  「……俺の、家族の事です。」  「家族?」  俺と、俺の家族を変えてしまったあの出来事から、その事を思い出さないように必死に生きてきた。  たった少しの影でも、記憶の隅から引っ張り出すと、きっともう止まらない気がしたんだ。またあの時の孤独や苦しみに襲われる。もうそんな生活はしたくないんだ。  だけど、隆明さんには知っていて欲しい。俺のワガママでただのエゴだってわかってるけど、  「俺………両親を殺したんです。」  「………ころ、した…?」

ともだちにシェアしよう!