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第62話

 「小学3年生の誕生日に、俺は両親を殺しました。」  「……クリスマス、」  隆明さんは真意を計り知れないからか、眉間にシワを寄せて見詰めてきている。俺はそんな隆明さんの視線から、繋がれた手の温もりから逃げるように、ソファに座り直した。  「12月25日の朝、母さんからは誕生日プレゼント、父さんからはクリスマスプレゼントを貰うのが恒例だったんです。」  「…うん。」  「両親は二人とも病院勤務で忙しい人で、緊急の患者や災害なんかの時は、いつも俺は家に一人で。その日も、」  「うん。」  酷い雪の日だった。横風が強くて、家中の窓がカタカタ鳴るのを一人で聞いていた。寒くて、怖くて、寂しくて。この世に俺一人しか存在しないんじゃないかって言う静けさと孤独感に襲われた。  思い出して震えていると、隆明さんが俺を抱え、膝の上に横抱きにした。暖かい腕にしっかりと抱かれ、頭や頬に何度もキスをされると、だんだんと震えが治まっていった。  「その日、こっちでも珍しく大雪が降って、至る所でスリップ事故が起きていたんです。あまりに事故の患者が殺到して、両親も病院に呼ばれました。」

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