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第63話

 「両親はプレゼントを俺に渡すと、すぐに慌しく準備を始めて、今日は帰れないかも、なんて言ったんです。………俺、寂しくて。」  プレゼントのラッピングを乱暴に剥がして、欲しい物をその通りに与えてくれた両親に対して、こんなの要らない!ボクが欲しいのはこれじゃない!と投げ飛ばしたんだ。  今日は1日一緒に居よう、って言って欲しくて。  「当然両親は困った顔をしていました。今でも覚えてる。連日の仕事や子育てで忙しかっただろうし、それに加えてそんなワガママを言って困らせて。」  「我儘なんかじゃないさ。子供が誕生日に親と過ごしたいなんて、当然の心理だろう。君は間違っていない。君の両親も間違っているとは言えないけれど。」  「わかってます。人を救けるのが仕事で、救けて欲しい人がいるのなら、それは仕方が無いことだって。」  でも、辞められなかった。ボクより仕事が良いのか。ボクより他の人を優先するのか。泣いて叫んだ俺に、両親は疲れた顔で言った。  “昼には帰って来れるようにする。そしたら欲しい物をちゃんと買いに行こう”って。  欲しいものをちゃんと与えてくれたのに、俺はきちんと見もせずに壊してしまった。両親を困らせて、泣いて迫ってそんなことを言わせてしまった。冷静になった俺は、空っぽの心で二人を見送った。

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