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第114話
「俺達、家族になれるんですか?」
「そうだよ。」
「おれ、隆明さんのお嫁さんになるの?」
「どうかな、太一くんがウェディングドレスを着たいなら、お嫁さんになるのかな。」
「……おれ、ドレスなんて似合わないですよ?」
「うん?こんなに可愛いのに似合わないはずがないだろう?」
俺が隆明さんのお嫁さんで、ウェディングドレスを着て、永遠の愛を誓って―
そんな、ドレスなんか想像も出来ないし、どちらかと言えばドレスよりもタキシードが良い。隆明さんはきっと白よりもシルバーやグレー系の方が似合うと思う。その隣に立つ俺は、平々凡々なりにオフホワイトのタキシードとか。
こんな嬉しいことってあって良いのかな。罰当たんないかな。あの日、俺の我儘で失った家族が、また俺に出来るなんて。
「俺、ウェディングドレスよりタキシードが良いです。呼び方も、お嫁さんじゃなくて旦那さんとかが良いです。あと…、」
「あと?」
「……いなく、なんないで…っ」
「うん、ずっと傍にいる。」
「うんっ、」
幼い頃に家族を失って、これは俺への罰だってずっと背負ってきた。大切に育ててくれたじいちゃんもばあちゃんも大好きな家族だけど。俺にとって、両親の存在は掛け替えのないもので、もうどうやったって取り戻せないもので。それは俺の中で、奥深くにしこりのように残っていた。
「ずっと、ですよ…っ、俺、もう隆明さんがいないと、生きていけないんですから……」
「うん。」
やっと、家族へのコンプレックスから解放された気がする。隆明さんとなら、きっとまた大好きな家族になれるよね。
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