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Die
「お前なんか邪魔なんだよ!!」
そう言って酒に酔った一人の男は目の前の息子をビンで殴り付ける。
何度も、何度も、何度も…………
そしてそれを怯えた様子で庇うことも無く見つめる母が遠くに見える。
ああ……僕は死ぬんだな。
少年は意識が朦朧としながらそう悟った。
でも不思議と怖くは無かった。
寧ろ安堵した。
だって自分を殴る父や学校でのイジメから解放されるのだから……
そして少年は死んだ__
再び目を開けるとそこには血塗れで倒れてる自分の姿と動かなくなった自分に焦る父と母の姿がある。
少年はそれを他人事のように見ていた。
「ははっ……はははは……」
本当に死んだのだと笑いすら出てくる。
自分の死に様がなんと滑稽で哀れなことか。
するとそこへ眩い光が現れた。
これはなんだと思っていると一人の男が現れた。
「御愁傷様です矢月祐也 君。」
「………誰?」
「私、亡くなった方々を天へと導く天使をしております、浅倉直孝 と申します。」
「天使?」
「はい。」
そうにこやかに話す眼鏡をかけた浅倉と言う天使。
いや、天使と言うか悪徳セールスマンのような男なのだが……
そして浅倉はこう言葉を続ける。
「この世に未練は?」
「これ見てあると思う?」
「さぁ?私には判断しかねます。」
この世に未練などない。
やっと自由になれるのだから。
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