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「それで、榛名。質問の続きはまだあるのかな?」 「う……」  榛名の腰はますますグイグイと霧咲に引き寄せられていき、ついに二人の間に――主に下半身に――隙間は無くなった。そして観念したように、榛名が言った。 「あの……よ、よろしくお願いします……その、けっこん……」 「……うん!」  そこでやっと息がつけたかのように、静かに二人を見守っていた観衆から盛大な拍手と歓声がどっと巻き起こった。 「榛名さぁん!旦那様ぁ!おめでとうございますぅぅぅ!!」 「やっとくっついてくれたー!!もー!!」 「今夜は婚約披露パーティーに招かれたはずなのにどうなることかと思ったよ!!」 「心臓に悪い演出をありがとう霧咲!!」  そして榛名は、自分達が良い見世物になっていた事実にようやく気付いた……というか、思い出して我に返った。 「うっわああ恥ずかしい……そういえばみんなが見てるんだった……うわああ……」  顔を真っ赤にして悶える榛名に対し、霧咲はあっけらかんとした態度で言う。 「君と俺との婚約披露パーティーなんだから、別にいいじゃないか」 「そんなの俺、知らなかったですよ!」 「だから本当は俺がきみにサプライズのプロポーズをしたかったんだよ……亜衣乃を紹介したあとにね。なのに君ときたらとんでもない勘違いをして……まったく。君の行動の方がよっぽどサプライズだ!しかも全然嬉しくないやつ」 「ご、ごめんなさい」 (いや……でも、俺を勘違いさせてた旦那様の方がひどくない?)  自分だけが謝ることに多少納得がいかなかったが、霧咲の言葉を全く信じていなかった自分もまあまあ悪いのか、と思い納得しようとしたのだが…… 「だから、君からキスしてくれたら許してあげる」 「……はい?」 なんですと? 霧咲がとんでもないことを言い出した。いくら自分も少々悪いとはいえ、こんな観衆の前でキスをするだなんて絶対にごめんだ、と言おうとした。しかし榛名が断るよりも早く、周りの方が盛り上がり始めた。 「おい!キスするらしいぞ!」 「待ってましたー!!」 「若葉さん!!カメラ、カメラの用意ですぅ!!」 「もうさっきから撮ってるよ!!」 「キース!キース!」 誰かがキスコールを始めて、いつの間にか大合唱になっていた。亜衣乃だけは、自分の伯父のキスシーンは見たくないのかまたは恥ずかしいのか、静かに姿を消していた。 多分また後で怒られるんだろうな――と霧咲は思ったが、今は榛名のキスの方が大事だ。 「さ、榛名。みんながキスをお待ちかねだよ」 「もしかして狙ってましたね……?」 「なんのことかな。とりあえずここはキスしとかないと収まらないと思うよ?」 「~~っ、もう!!」 榛名は半ばヤケクソになり、霧咲の襟を乱暴に引っ張るとブチュッと派手に口付けた。観衆からおおーっという感嘆の声が上がり、榛名はどうだこれで満足したか、と今度は霧咲を突き放そうとしたのだが……簡単に突き放される霧咲ではなかった。 「んっ……?ん、ンンン、んぅーっ!!はっ、、むちゅ、チュプッ……!!」 榛名の腰を抱き頭を自分の方へ押さえつけて、そのまま激しいキスをお見舞いし観衆に見せ付けてやったのだった。 「ぷはっ……!ちょっ……もう……」 「俺の可愛い小鳥ちゃん、とりあえず説教は後でベッドの中で聞いてあげよう」 「聞いてあげるんじゃなくて、聞かされる立場です貴方は!!!」 「おっと、言葉のあやだ」 「絶対わざとでしょ!!もう……!」 (もう……困ったひと。 でも……でも……そんな貴方が好きっ!!!) ――小鳥の恋の病は、まだしばらく治らなそうである。 恋の病に罹った小鳥【終】

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