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しあわせのかたちを手に入れるまで9

「竜馬ここは手を繋ぐよりも、腕を組んだ方がそれなりに見えるかもしれないぞ」  ちょっとだけ得意げな顔した小林が、掴めと言わんばかりに左腕を躰に当ててきたので、言うとおりにちまっと腕を通してやった。そのとき背後から『ぷっ!』という吹き出す声がチャペルの中に響いた。  ふたり揃って声がした方を向いたら、口元を押さえた安藤と目が合う。 「小林ってば偉そうな態度してるけど、駄々っ子みたいに見えるわよ」 「うっせぇな。黙って見てろよ」  意気込んでいる小林を横目に、こっそりとため息をついた。  高級ホテルにある立派なチャペルとは相反する自分たちの姿――小林はヨレヨレのスーツ姿で、竜馬は会社で支給されている仕事着に片手には帽子を握りしめている状態。  こんなふたりのために使用後ではあるものの、チャペルを貸し与えてくださった古くからの友人に悪態をつくことができるなんて……。不器用な人だから、ひとつのことにしか集中できないのが分かっているけれど、もう少しだけ配慮を覚えてほしい。  じとーっとした視線を小林に送り続けると、やっとそれに気がついてハッとした表情になった。 「……小林さん」  いつもより低い声色に何かを悟ったのか、片側の頬をピクッと引きつらせながら前を向いた。 「そ、そろそろ行くぞ」 「はい」  耳に聞こえてくるパイプオルガンの音色に合わせるように、ふたり揃って一歩一歩祭壇に向かって進んでいく。バージンロードを踏みしめるたびに、感極まってきて涙腺が緩みそうになった。  その理由のひとつは流れてくる曲に合わせて、頭の中に歌詞が流れるせいだった。  互いに傷ついた過去があるからこそ、やけにそれが胸に染み入るんだ。  祭壇前に辿り着いたら、組んでいた腕を解いてきたのでそれに倣って直立した。  牧師さんがいないこの状況下で、これから小林はどんなことを行うつもりだろうかと内心心配していたら、ポケットに忍ばせていたえんじ色の指輪が入ったケースを取り出して祭壇の上に置く。  その行動で指輪の交換をするんだと判断し、手に持っていた帽子を祭壇の隅っこに置かせてもらった。

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