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00. 「どうして」

 目を覚ますと、瞼を上げたはずなのに目の前が真っ暗だった。眉間に思い切り皺を寄せる。目元で、何か布のようなものがズレる感じがした。  それを外そうとして手を伸ばして―― 「っ!?」  手が、伸ばせなかった。  そこでようやく、自分が手足を縛られていることに気が付く。 「な、なんだ、これ……」  身じろぐと、自分の身体が布団のようなものの上にあることがわかる。手足縛ってるわりに手厚い対応だな、なんて思っていると、遠くの方で扉の開く音がした。  ペタ、ペタ、と小さな足音が近づいてくる。 「……っ」  目の前に、誰かが立っているのがわかる。 「っ、誰だよ!」  僕の言葉に、 「ふふ」と柔らかい笑いが漏れ聞こえた。  と、突然、僕の視界を奪っていた布がはぎとられる。白い光が目に刺さって、思わず目を瞑った。こんなことをする奴の顔を見てやろうと、睨み付けるように目を開く。  そこには―― 「さあ」  見たこともないくらい生き生きとした、それでいて―― 「調教開始だ」  恍惚とした表情を浮かべる(さとる)がいた。 「どう、して」  どうしてこんなことになったのか、なんて、本当はわかっていた。

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