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04. 「ずっと」
息が苦しい。
「っ、ぁ、さと、る、ぅ……!」
重ねられた唇の隙間から、漏らすように慧の名前を呼んだ。身体を捩っても、ベッドに繋がれたままでは思うようにはならない。
慧の舌先が僕の唇を割って押し入ってきた。それと一緒に、何か、小さな粒のようなものが無理やり押し込まれる。
「んんっ、ん……!」
ゆったりと離れていく唇から、だらしなく糸が垂れた。慧の顔が、離れていく。その表情は、やっぱり見たことない笑みを浮かべていて、僕はどうしようもなく――
「……そんな色っぽい顔するんだね、要くん」
どうしようもなく、慧の唇が恋しかった。
離れてしまった唇を追って、口を開こうとすると、さっき押し込まれた小さな粒が唇の端からこぼれそうになる。
「だめ、ちゃんと飲まないと」
ベッドの脇に置かれたペットボトルの水を、慧が口に含む。そして、そのまま僕にまた唇を重ねて――
「んん……!」
少しだけぬるくなった水が、僕の口の中に流れ込んでくる。僕はそれを必死に飲み込んで、慧の言った通りにその小さな粒を嚥下した。
「……要くん、ちょっとは疑うってことをした方がいいよ」
「っ、今の、何」
「媚薬、って知ってる?」
「っ……!」
「嘘、痛み止めだよ。たぶん、終わったあと痛いだろうから」
慧はクスクスと楽しそうに肩を揺らした。その顔はやっぱり綺麗で、僕は思わず、
「……綺麗」と声に出してしまう。
「……余裕だね、要くん」
「っん! あぁっ……」
シャツを破られて露わになった胸の突起を、慧の冷たい指先が思い切り捻った。それから、ゆるゆると転がすように撫でられる。小さな刺激が走る度に、身体を跳ねさせた。
「要」
と、慧が僕の名前を呼んだ。
「俺、ずっとこうしたかったんだ」
ねっとりと、慧の舌先が僕の胸の突起を舐めた。思い切り背中をのけぞらせると、手足の繋
がれたベッドが軋む。舌先で胸をもてあそびながら、慧はゆっくりと言葉を紡いだ。
「大変だったんだよ、要が離れていかないように、ひとりじゃ何もできない振りをして」
「っ、あぁ……っ、さと……っ!」
「親の前でもずーっといい子にして。全部、要と一緒にいるためだったのに」
「っは、ぁ……あ、待っ……」
「なのに要、何まんまと告白されに図書室なんて行っちゃってるの? 襲ってくださいって言ってるようなものじゃない」
「ゃ、ちが……っぁ」
違う、あいつが好きなのは僕じゃないんだ。って言おうとするのに、舌がうまく回らない。そうしている間にも慧の指先が身体を撫でる。開かれた口からは、自分でも聞いたことのない甲高い声と、もうどっちのものだかわからないよだれが、ぐちゃぐちゃになった理性と一緒にこぼれていく。
どうしてこんなことに、なんて馬鹿げてる。
だって、僕は、慧のことが好きなんだ。僕は、僕だって、ずっと、慧と――
「俺だけに見せる顔、見せてよ」
慧が自分のベルトに手を掛けたのを見ながら僕は、やっぱり慧は綺麗だ、と思った。
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