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第1話

どれ位こうしているだろうか? 伸ばした僕の手がプルプルと震えている。困惑した顔でそんな僕を見つめる彼。 「お願いしますっ!!」 再び頭を下げ、伸ばした腕を彼の体に触れるほど近くまでさらにぐっと伸ばすと、彼はそれから体を離すようにして少し上半身を反らした。 「君ねぇ…。」 半ば呆れたように言うと、はぁと大げさにため息をついて廊下の天井を仰ぎ見る。 「無理なものは無理だよ。大体私は君の事を何も知らないし。」 はぁと再びため息をつく。 「君が私の事をどれだけ知っているかは分からないが、そんなに売れている物書きというわけではないんだよ、私は。マネージャーや雑用なんかに人を雇うほどの余裕、悪いけれどないんだ。分かったらさっさと帰ってもらえるかな?一応これでも仕事中なんでね。」 悪いね、そう言いながら後ろを向いて扉を開けると、部屋の中に入り扉を閉めようとした。 ここで閉められてしまったら、次はない。 扉が閉まる直前に足を入れ、その出来た隙間に手を差し込むと、ぐっと力を入れて扉を開けた。 「おいっ、何をすっ…あっ!!」 扉のノブに手をかけていた彼は引っ張り出されるような格好になり、グラッと体のバランスが崩れる。その体を抱き抱えるようにして受け止めた。

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